木下惠介監督作『二十四の瞳』封切り――岬の分教場に静かな感動の波

 【東京 9月14日】

昭和映画界を代表する名匠・木下惠介監督による新作映画『二十四の瞳』が本日、松竹系劇場にて封切られた。
高峰秀子演じる若き女性教師と、瀬戸内海の小さな島の子どもたちとの交流を描いた本作は、戦前から戦後へと移りゆく激動の時代を背景に、教育の尊さと人間愛を深く問いかける内容となっている。

原作は、壺井栄による同名小説。舞台は香川県・小豆島。女教師・大石久子が赴任した分教場で出会う12人の児童との関わりが、12年の歳月を通して静かに、しかし濃密に描かれていく。

上映初日の劇場では、鑑賞後に涙ぐむ観客の姿も多く見られ、ある中年女性は「何度も胸が締めつけられました。戦争の時代を思い出して…」と感想を述べていた。

主演の高峰秀子は、その凛とした佇まいと、包容力ある演技で絶賛されており、彼女の代表作となることは間違いないとの声も高い。また、子どもたちの自然な演技も評価され、今後の国内外の映画賞への期待も高まっている。

平和への願いと、教育の本質を静かに描く本作は、ただの“感動作”にとどまらず、日本映画のひとつの到達点を示す作品といえよう。

— RekisyNews 文化面 【1954年】

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