【ヴェネツィア 9月6日】
第15回ヴェネチア国際映画祭で、日本映画界を代表する二人の巨匠――黒澤明監督の『七人の侍』と、溝口健二監督の『山椒太夫』が共に銀獅子賞を受賞した。
このW受賞は、日本映画の国際的評価の高まりを象徴するものであり、国内外から大きな注目が集まっている。
黒澤監督の『七人の侍』は、戦国時代を舞台に、農民の村を守るために集められた七人の侍たちの生き様を描いた大作。人間描写の緻密さと映像演出の迫力が高く評価され、上映後は会場からスタンディングオベーションが巻き起こった。
一方の『山椒太夫』は、溝口監督らしい繊細な映像美と重厚な人間ドラマで、平安時代の親子の離別と再会を悲しくも美しく描いた作品。溝口監督は、前年に続く2年連続の銀獅子賞受賞となり、世界映画界での存在感をさらに確かなものとした。
審査委員会は、両作品について「異なる様式ながら、共に深い人間性と独創的な演出を持ち、国際映画に新たな視座を与えた」と高く評価。日本映画の成熟を世界が認めた瞬間となった。
今回の受賞を受け、日本国内では両作品の再上映や特集上映の動きが活発化しており、映画芸術の再評価とともに、日本映画の国際進出に弾みがつくことは確実だ。
— RekisyNews 文化面 【1954年】