NHKラジオで『宮本武蔵』放送開始 徳川夢声が情感豊かに朗読

 【東京 9月5日】

 NHKラジオは本日より、吉川英治の人気歴史小説『宮本武蔵』の朗読番組を開始した。朗読を務めるのは、名調子で知られる弁士・徳川夢声氏。初回放送から、力強くも繊細な語り口が聴取者の心をつかみ、大きな反響を呼んでいる。

『宮本武蔵』は、天下無双の剣豪・宮本武蔵の波瀾万丈な生涯を描いた長編小説で、吉川英治氏が昭和初期に新聞連載を行って以来、多くの読者に親しまれてきた作品。今回のラジオ放送では、物語の魅力を音声のみでどれだけ表現できるかに注目が集まっていた。

徳川夢声氏は、無声映画時代からの名解説者として知られ、独自の抑揚と間を活かした語りによって、登場人物たちの感情や場面の緊迫感を巧みに伝えている。NHK関係者は「声だけで風景が浮かぶような朗読。聴く文学の真価を感じていただきたい」と語る。

放送は毎週数回にわたって行われる予定で、続きが気になる聴取者からの要望に応じて長期シリーズ化も検討されているという。戦時下の不安が漂う中、人々に希望と勇気を届ける放送文学の試みに、今後ますます注目が集まりそうだ。

— RekisyNews 文化面 【1939年】

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