【後楽園 9月4日】
プロ野球・トンボユニオンズのエース、ヴィクトル・スタルヒン投手が本日、後楽園球場での対毎日オリオンズ戦にて、史上初となる通算300勝を成し遂げた。これは日本プロ野球創設以来、いかなる投手も到達していなかった大記録であり、スタルヒン投手の栄光のキャリアに新たな金字塔が打ち立てられた。
試合は序盤から緊張感に包まれたが、スタルヒン投手は持ち前の制球力と老練な投球術で打者を翻弄。7回2失点の力投でチームを勝利に導き、自らの節目の勝利を確かなものとした。試合終了後、球場には大きな拍手と歓声が響き渡り、ベンチからはチームメイトが駆け寄って祝福。敵味方を超えてその偉業に惜しみない賛辞が贈られた。
ロシア生まれのスタルヒン投手は、1936年の日本職業野球連盟発足と同時に大東京軍(現・読売ジャイアンツ)でデビュー。若くして頭角を現し、戦前から戦後にかけて長く第一線で活躍。戦争を挟む激動の時代を生き抜き、幾多の困難を乗り越えて今なおマウンドに立ち続けるその姿は、多くのファンにとって希望の象徴でもある。
「勝利は一人で得られるものではない。支えてくれた全ての人に感謝したい」と、試合後の囲み取材で語ったスタルヒン投手。その穏やかな口調と深々とした一礼に、記者席も静まり返った。
日本プロ野球の黎明期を背負い続けた男が、ついに記録でも歴史に名を刻んだ。これにより、名実ともに“伝説”となったスタルヒン投手。その背番号は、今後の野球史において特別な意味を持ち続けることだろう。
— RekisyNews スポーツ面 【1955年】