【東京・原宿 8月31日】
東京・原宿の象徴として知られた歩行者天国(ホコ天)が、本日をもって28年の歴史に幕を下ろした。1970年に開始され、竹下通りから表参道にかけて週末・祝日に開放されていたが、近年は大音量での演奏や路上パフォーマンスによる騒音、観光客や若者の急増に伴う混雑、さらに治安悪化への懸念が高まり、警視庁はついに廃止を決定した。
廃止を目前にした最終日、原宿には全国から多くの若者が集まり、いつも以上の熱気に包まれた。ローラースケートや奇抜なファッションで注目を集めた“竹の子族”の元メンバーも姿を見せ、当時の名曲を流しながら、ホコ天時代を懐かしむ人々で溢れた。ある20代女性は「ここで友達ができ、夢を見つけた場所。寂しいけど仕方ない」と涙を浮かべながら語った。
警視庁によると、1990年代後半からは無許可バンドによる大音量ライブや、外国人観光客の急増による混雑が深刻化。加えて一部では違法薬物やスリ被害の報告もあり、警備負担が限界に達したという。今後は歩行者天国の再開予定はなく、代替イベントの計画も現時点ではない。
一方で、原宿ホコ天は1970〜80年代の若者文化を象徴する存在であり、ファッション、音楽、ダンスなど多くのカルチャーを発信してきた。専門家は「ホコ天の終焉は、原宿の文化的転換点になる」と指摘している。
華やかな時代を駆け抜けた原宿ホコ天は、混乱と騒然の中で静かに幕を閉じた。だが、ここで生まれた独自のカルチャーは、多くの人々の心に強く刻まれ続けるだろう。
— RekisyNews 社会面 【1998年】