【東京 8月28日発】
日本初の民間テレビジョン放送局、日本テレビ放送網(NTV、本社・東京都千代田区)は本日午前11時20分、東京・芝公園の送信所から記念すべき第一声を発し、本放送を開始した。新しい映像メディアの登場に、首都圏の街頭では多くの市民が店先の受像機に集まり、白黒画面に映る動く人影を食い入るように見つめた。
開局記念番組では、読売新聞社主の正力松太郎氏が「テレビは新しい時代の窓であり、日本の未来を照らすものになる」と挨拶。その後、歌謡ショーやプロ野球中継など、娯楽性を重視した番組が続き、会場の雰囲気は大いに盛り上がった。
放送エリアは当面、東京を中心とした半径約50キロ圏内で、チャンネルは4チャンネル。現在の受像機普及台数は約3,000台にとどまるが、家電販売店には「テレビを見たい」という市民が殺到し、今後の需要拡大が見込まれている。銀座や新橋の電器店では、店頭に並べられた受像機の前に黒山の人だかりができ、「これがテレビか」「本当に動いている」と驚きの声が上がった。
また、日本テレビは本放送開始に合わせ、映画やスポーツ、ニュース報道を重視した編成方針を発表。特にプロ野球中継については、読売ジャイアンツ戦を中心に定期放送する計画で、スポーツファンからの期待も高い。
終戦からわずか8年、荒廃した街に届いた白黒の映像は、人々に新たな時代の到来を予感させる。
テレビジョンの小さな画面から流れた今日の第一声は、日本社会の風景を大きく変える幕開けとなりそうだ。
— RekisyNews 社会・文化面 【1953年】