喜劇の新星、日本全国津々浦々を旅する人情喜劇『男はつらいよ』、ついに銀幕へ

【東京 8月28日】

日本各地を放浪するテキヤの寅次郎が、故郷の東京・葛飾柴又へ舞い戻り、騒動を巻き起こす人情喜劇『男はつらいよ』が、昨日より全国一斉公開された。高度経済成長の喧騒が続く中、昔ながらの義理人情や、家族の温かさを描く作品として、既に公開前から大きな注目を集めていた。

監督は、既に『ハナ肇の一等兵』や『なつかしい風来坊』で手腕を振るってきた山田洋次氏。そして主人公の車寅次郎を演じるのは、名優・渥美清氏である。これまでも数々の喜劇で国民的な人気を博してきた渥美氏だが、今回の寅次郎役はまさに当たり役と言えるだろう。だらしなくも憎めない、そしてどこか哀愁を帯びた独特のキャラクターが、観客の心をつかんでいる。

物語は、久しぶりに柴又の実家に戻ってきた寅次郎が、妹のさくら(倍賞千恵子)や育ての親のおいちゃん(森繁久彌)、おばちゃん(三崎千恵子)たちと再会する場面から始まる。久しぶりの再会も束の間、寅次郎は持ち前の喧嘩っ早さで騒動を起こし、また旅に出てしまう。劇中では、寅次郎が惚れっぽい性格から次々とマドンナ(光本幸子)に失恋する様子が描かれており、その滑稽さと哀愁が笑いと涙を誘う。

初日を迎えた東京・有楽町の劇場には、開場前から多くの観客が詰めかけ、寅次郎の登場を心待ちにしていた。劇場を後にした観客からは、「人情味あふれる話で、久しぶりに温かい気持ちになった」「寅さん、本当におかしくて、でもちょっと泣けた」といった声が聞かれ、作品への手応えを感じさせた。

制作陣は、今後も寅次郎の旅を追い続ける構想を明かしており、シリーズ化も示唆している。日本中を股にかけた風来坊の物語が、今後どのように展開していくのか、その動向から目が離せない。この作品が、単なる喜劇の枠を超え、日本の人情を描く代表作となるか、今後の興行成績が注目される。

— RekisyNews 文化・芸能面 【1969年】

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