倉金章介氏、逝去 戦前・戦後をつなぐ児童漫画の礎

 【東京 8月25日】

本日、漫画家の倉金章介氏が都内で逝去した。享年59。戦前の児童雑誌から戦後の大衆誌まで軽妙な線とナンセンス感覚で読者を魅了し、擬音とテンポの良いコマ運びで笑いを編んだ功労者である。編集者と二人三脚で新人の下描きに赤を入れる面倒見の良さでも知られ、復興期の出版現場を支えた。

代表作は、戦後少女漫画の古典とされる『あんみつ姫』。雑誌「少女」での連載が映画・テレビ・舞台へ広がり、明朗な時代活劇の調子を広く定着させた。続いて、雑誌「平凡」連載の『てんてん娘』は1956年に映画化、1984年にテレビドラマ化され、庶民喜劇の温度をそのまま画面に運んだ。ほかに『豆姫さま』(別題「水戸黄門の孫 豆姫さま」)、『ピカドン娘』など、お転婆な姫君と下町の人情を描く連作で読者層を広げ、1953年には一連の作で小学館児童文化賞を受けている。

同世代の作家は「人物がページから飛び出すように動いた」と回想し、若い世代は「丸みのある線と“間”の作り方に学ぶことが多い」と追悼する。紙芝居から雑誌、単行本へ -メディアを横断して広がった半世紀に、倉金氏の“明るい笑い”は絶えず子どもの目線に寄り添っていた。遺された本は今も本棚で息づき、ページを繰る指先に当時の笑い声がよみがえる。

— RekisyNews 文化・訃報面 【1973年】

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