【ロサンゼルス 8月25日】
本日、作家トルーマン・カポーティ氏が市内の友人宅で死去した。享年59。戦後アメリカ文学を代表する存在であり、都会の機微から犯罪の闇までを鋭い観察とリズムある文体で切り取った。
1948年の長編デビュー作『遠い声、遠い部屋』で注目を集め、都会の孤独と夢を洒脱に綴った中編『ティファニーで朝食を』は映画化され世界的成功を収めた。1966年の『冷血』では現地取材を基に構成した“ノンフィクション・ノヴェル”という手法を確立し、事実と文学の境界に新たな道を拓いた。
社交界でも軽妙な話術で知られ、66年には「ブラック&ホワイト舞踏会」を主催して時代の顔を一堂に集めた。一方、連載で断章を公開した未完の長編『叶えられた祈り』は、上流社会の素顔を露わにしたとして波紋を呼び、交友関係に亀裂を生んだ。晩年は体調悪化と執筆中断に悩みながらも、短篇や随筆に研ぎ澄まされた筆致を残した。
編集者は「虚構と事実、耳で聞こえる音楽のような文章で時代を記録した」と追悼。遺稿と書簡の整理が進めば、作家像の再評価がいっそう深まるだろう。甘美で残酷、華やかで孤独 -カポーティが描いたアメリカは、多くの読者の記憶に今も生きている。
— RekisyNews 文化・訃報面 【1984年】