【ケンブリッジ(マサチューセッツ) 8月12日】
米国詩壇の長老であり、外交官としても知られたジェイムズ・ラッセル・ローウェル氏が、本日午前、故郷ケンブリッジの自宅で息を引き取った。享年72。近年は持病の神経痛や心臓の不調に悩まされ、療養生活を送っていたという。葬儀は家族と親しい友人のみで行われる予定。
ローウェル氏は1819年ケンブリッジ生まれ。ハーバード大学卒業後に弁護士資格を得るも文筆に転じ、詩や評論で頭角を現した。反奴隷制運動への参加は彼の筆をさらに鋭くし、風刺詩『ビッグロー・ペーパーズ』や抒情詩『心の歌』などで北部知識層の支持を集めた。また、文芸誌『アトランティック・マンスリー』の初代編集長として若手作家を積極的に登用し、米文学の発展に寄与した。
1877年には駐スペイン公使、続いて駐英国公使に任命され、国際舞台でも手腕を発揮。大西洋を挟んだ友好関係の構築や文化交流に尽くし、帰国後は講演活動を通じて海外経験を広く伝えた。
地元紙は「その詩は自由と公正を讃え、外交では言葉と誠実さを武器とした」と追悼。文壇からは「彼の批評眼は鋭くも温かかった」との声が寄せられている。
葬儀後、遺体はマウント・オーバーン墓地に埋葬される予定。詩人であり愛国者でもあったローウェル氏の著作と思想は、今後も米文学と市民精神の中に息づき続けるだろう。
— RekisyNews 文化部 【1891年】