「桃太郎の海鷲」が劇場公開 ―― 日本初の長編漫画映画、卓越した技術で描く

【東京 3月25日】

本日、芸術映画社製作による日本初の長編アニメーション映画『桃太郎の海鷲』が、全国の映画館で一斉に封切られた。海軍省の要請を受けて製作された本作は、瀬尾光世監督が私財を投じて研究を重ねたマルチプレーン・カメラによる立体的な演出を導入。従来の平面的な動画とは一線を画す、圧倒的な臨場感をもって観客の前に姿を現した。

物語は、桃太郎を指揮官とする動物の精鋭部隊が、鬼ヶ島(ハワイ・オアフ島がモデル)を急襲し、敵艦隊を壊滅させるというものだ。真珠湾攻撃をモチーフとした空中戦の描写は極めて緻密であり、編隊飛行の美しさや爆撃の火炎、さらには波頭に砕ける水しぶきに至るまで、驚くべき執念で描き込まれている。特に、実写映像を参考に構築された攻撃シークエンスは、子供向けの漫画映画という枠を超え、大人の観客をも唸らせる完成度を誇っている。

本作の製作にあたり、瀬尾監督はディズニー映画『ファンタジア』などの海外作品を徹底的に研究し、キャラクターの滑らかな動きと影の表現を追求した。戦時下の物資不足により、セル画の確保すら困難な状況であったが、スタッフたちの熱意によって、37分という当時としては異例の長尺作品が完成した。

封切り初日の本日、映画館には多くの親子連れや学生たちが詰めかけ、スクリーンの中で縦横無尽に駆け巡る桃太郎とその部下たちの雄姿に歓声が上がった。国威発揚という側面を持ちつつも、本作が示した「動く絵」への飽くなき探究心と高い芸術性は、大東亜戦争の完遂に向けた国民の士気を高めるとともに、日本の動画技術が世界水準にあることを力強く証明するものといえるだろう。

— RekisyNews 文化面 【1943年】

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