【ロンドン 3月14日】
本日夜、ウェストエンドのサヴォイ劇場において、当代随一のコンビ、ギルバート氏とサリバン氏による待望の新作オペレッタ『ミカド(またはティティプの町)』の幕が上がった。ロンドン市民の間で空前の盛り上がりを見せる「日本趣味(ジャポニスム)」を題材に取ったこの作品は、初夜から詰めかけた観衆を爆発的な笑いと喝采の渦に巻き込んでいる。
物語は、架空の日本の町「ティティプ」を舞台に、独裁的な「ミカド」とその息子ナンキ・プー、そして死刑執行人ココの奇妙な人間模様を描く。しかし、舞台上の着物姿や扇の所作とは裏腹に、劇中で風刺されているのは紛れもなく我が国の官僚主義や法体系である。ギルバート氏の毒のある脚本と、サリバン氏の流麗かつ陽気な音楽が見事な調和を見せている。
上演にあたり、制作者側はロンドンのナイツブリッジに設置された「日本村」の職人たちを劇場に招き、俳優たちに正しいお辞儀や歩き方の指導を受けさせたという。この徹底した異国情緒の演出が、観客を未知の東洋世界へと誘っている。特に劇中歌「Three Little Maids from School」などは、早くも街中の流行歌となる予感を感じさせる。
本作は、単なる異国趣味の喜劇に留まらず、社会風刺を娯楽へと昇華させたギルバート&サリバン作品の最高傑作との呼び声も高い。この「日本の調べ」がロンドンの夜をいつまで彩り続けるのか、記録的なロングラン公演への期待が早くも高まっている。
— RekisyNews 文化面 【1885年】
