【東京 3月11日】
本日、民友社より、気鋭の作家・国木田独歩氏の初となる作品集『武蔵野』が発行された。明治文学の新たな旗手として注目される独歩氏が、これまで文壇で等閑視されてきた「自然のありのままの姿」を独自の感性で描き出した、野心溢れる一冊となっている。
表題作の「武蔵野」は、独歩氏がかつて渋谷の村に隠棲していた際の日記を基に構成されたものだ。氏は、江戸時代以来の「月の名所」といった記号的な捉え方を排し、冬の枯れ林や風にそよぐクヌギの葉音、そしてそこに生きる名もなき人々の生活を、透徹した観察眼で描いている。
収録作には「源おじ」や「忘れえぬ人々」といった、抒情性と写実性が融合した珠玉の短編が並ぶ。これらの作品に共通するのは、華やかな都心ではなく、その周縁に広がる「辺境」への深い慈しみである。独歩氏の筆致は、言文一致体の洗練をさらに一歩進め、読者の五感に直接訴えかける瑞々しさを湛えている。
文壇では、この一冊が従来の「美文」の枠を打ち破り、日本の自然主義文学における重要な里程標になるとの声が上がっている。独歩氏が見出した武蔵野の「秋から冬へかけての美しさ」は、今後、多くの知識人や若者たちの自然観に大きな影響を与えるに違いない。
— RekisyNews 文化面 【1901年】
