【ミラノ 3月9日】
本日夜、ミラノ・スカラ座において、若き作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの新作歌劇『ナブッコ』(ナブコドノゾール)が初演された。前作の酷評以来、沈黙を続けていたヴェルディ氏の再起をかけたこの一作は、幕が下りるやいなや、スカラ座の長い歴史の中でも稀に見るほどの嵐のような喝采に包まれた。
物語は、旧約聖書に記されたバビロン捕囚を題材としているが、観衆の心を最も激しく打ったのは第3幕の合唱曲「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」であった。バビロンの河のほとりで故郷への想いを歌い上げるユダヤ人たちの姿は、奇しくも現在の異邦の支配に喘ぐイタリアの民衆自身の姿と重なり、場内にはむせび泣く声と、「アンコール!」を叫ぶ地鳴りのような歓声が響き渡った。
劇場の慣習として合唱のアンコールは禁じられているが、あまりの熱狂に指揮者はそれに応じざるを得なかった。ヴェルディ氏が書き上げた力強くも悲哀に満ちた旋律は、単なる劇中歌を超え、イタリア人の魂を鼓舞する聖歌のごとき響きを持って届けられた。
この一夜の成功により、ヴェルディ氏はイタリア最高の歌劇作曲家としての地位を不動のものとした。劇場の出口では「V.E.R.D.I.!(ヴィットーリオ・エマヌエーレ・イタリア王)」という、統一への願いを込めた合言葉が早くも囁かれ始めている。音楽が政治と自由を繋いだ歴史的瞬間。スカラ座の黄金の装飾が、今夜ほど誇り高く輝いたことはない。
— RekisyNews 文化面 【1842年】
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