【新宿 3月5日】
本日夜、東京・新宿の喫茶店「カトレア」において、わが国のSF(サイエンス・フィクション)の普及と作家同士の親睦を目的とした「日本SF作家クラブ(SFWJ)」が産声を上げた。星新一氏、小松左京氏、筒井康隆氏ら、気鋭の作家たちが顔を揃え、未開のジャンルであった「空想科学小説」を日本の文学界に根付かせるための歴史的な一歩を踏み出した。
発足にあたって集まったのは、作家、翻訳者、編集者ら計11名。初代事務局長には、ショートショートの旗手として知られる星新一氏が就任した。会合では、単なる親睦団体に留まらず、海外作品の紹介や若手作家の育成、さらにはSFという概念そのものを社会に広く浸透させていく方針が確認された。
現在、世界は宇宙開発競争の真っ只中にあり、人々の関心は未知の外宇宙や科学技術の未来へと向かっている。しかし、わが国の文壇においてSFは依然として「子供向けの絵空事」と見なされる傾向が強い。こうした現状に対し、小松氏らは「現代社会の矛盾や人間の本質を鋭く抉り出す文学としてのSF」の可能性を提唱している。
本日の発足式では、特定の会長を置かない「横の繋がり」を重視した組織運営が合意された。これは、自由で既成概念にとらわれないSF精神の現れといえる。今後、クラブは定期的な例会を開催し、情報の共有や共同での出版企画などを進めていく構えだ。
科学の進歩が空想を現実へと変えつつある現代において、作家たちの想像力が紡ぎ出す物語は、単なる娯楽を超えて、我々がどのような未来を築くべきかを示す「羅針盤」となるに違いない。新宿の片隅で灯されたこの小さな火は、やがて日本のエンターテインメント界を大きく塗り替える巨大な炎へと育っていくことだろう。
— RekisyNews 文化面 【1963年】
