「水上の調べ」を超え、ロンドンを征服 ── ヘンデル『リナルド』、女王陛下劇場で初演

【ロンドン 2月24日】

ロンドンの劇場街ヘイマーケットが、かつてない熱狂に包まれている。ドイツから渡来した若き鬼才ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルによる新作イタリア・オペラ『リナルド』が本日、女王陛下劇場にて初演された。これはロンドンのために特別に書き下ろされた初の本格的なイタリア・オペラであり、その圧倒的な旋律美と豪華絢爛な舞台演出は、目の肥えたロンドンの聴衆を瞬時に虜にした。ヘンデルの英国進出を決定づけるこの成功は、わが国の音楽史における「イタリア・オペラ時代の到来」を告げるファンファーレとなった。

今回の成功の背景には、第一次十字軍を題材とした幻想的な物語と、それを具現化する空前絶後の舞台仕掛けがある。特にアリア「私を泣かせてください」に代表される深い叙情性と、派手な管弦楽の対比が見事であり、劇中に本物の小鳥を放つといった奇抜な演出も大きな話題を呼んだ。ヘンデルは、イタリアで学んだ最新の様式を英国の嗜好に完璧に適合させ、「音楽によるスペクタクル」を完成させた。これは、地味な娯楽に甘んじていたロンドンの社交界に、大陸の洗練された薫りを吹き込む歴史的転換点である。

現場となった劇場のロビーは、国王や貴族、そして新興の市民層が入り乱れ、幕間の休息時にも「あのアリアこそが神の調べだ」と熱心に議論する声が絶えない。指揮を執るヘンデルの力強いタクトから生まれる音の奔流に、聴衆は総立ちとなって喝采を送り、舞台上の英雄リナルドの武勇に自国の繁栄を重ね合わせる者もいた。ある音楽愛好家は「ヘンデルこそが、ロンドンの耳を浄化した」と、興奮冷めやらぬ表情で語った。テムズ川の冷たい風を忘れさせるほどの熱気が、劇場の壁を越えて街中にまで溢れ出している。

この『リナルド』の爆発的な人気が、ロンドンを欧州におけるオペラ制作の拠点へと押し上げ、ヘンデルと英国の絆を盤石なものにしていくのではないかとの見方もある。また、彼が提示したドラマチックな音楽語法が、後のオラトリオや器楽曲にいかなる影響を与え、「国民的作曲家」としての地位を不動のものにするのか。女王陛下劇場に響き渡った壮麗な序曲が、英国音楽の黄金時代をいかに切り拓いていくのか、その歩みが鋭く注目される。

— RekisyNews 芸報 【1711年】

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