【ニューヨーク 2月18日】
本日、米国の作家マーク・トウェインが新作長編『ハックルベリー・フィンの冒険』を刊行した。舞台はミシシッピ川流域。少年ハックが家を離れ、逃亡奴隷ジムと筏で川を下る道中を、当人の口語で語らせる趣向が目新しい。出版元はニューヨークのチャールズ・L・ウェブスター社で、同書は昨年末に英国で先行刊行されたのち、米国内向けに本日発売となった。
本書は挿絵も多く、川沿いの町の姿や汽船、酒場の喧騒などが紙面に刻まれている。書店には朝から新刊を求める者が訪れ、表紙絵を指でなぞりながら頁を繰る姿が見られた。語り口は飾りを避け、田舎言葉や船着き場の会話がそのまま活字に移されている。読み手を選ぶとの声もあるが、川霧の匂い、泥の岸辺の冷え、夜更けの焚き火の赤といった情景が細やかに描かれ、旅の不安と自由への憧れが交互に迫る。
作者は以前『トム・ソーヤーの冒険』で少年の悪戯を描いたが、今作では笑いの裏に、身分や世間体が人を縛る現実がのぞく。物語の途中、善悪の判断を迫られる場面も多く、読者の胸中に波紋を残しそうだ。発行関係者は「家庭向けの読み物としても受け入れられる」としつつ、俗語や辛辣な描写を理由に眉をひそめる向きも出るのではないかと見ている。新作がどこまで支持を広げるか、今後の評判と売れ行きが注目される。
また、作者が各地で講演を重ねて名を広めてきたこともあり、地方からの取り寄せ注文も早いという。新聞各紙は「川の少年譚」として紹介し、読書会では次の題材にするとの声も聞かれる。新刊の行方は、今年の文芸界の話題を左右しそうだ。
— RekisyNews 文化面 【1885年】
