クナッパーツブッシュ、最後の録音に臨む 独墺楽派の巨匠、タクトを収める

【ミュンヘン 1月29日】

ドイツを代表する指揮者 ハンス・クナッパーツブッシュ が、この日ミュンヘンにおいて自身最後となるレコーディングを行なった。長年にわたり独墺系音楽の伝統を体現してきた巨匠が、静かに録音スタジオを後にしたことは、音楽界に大きな余韻を残している。

クナッパーツブッシュは、即興性を重んじた大胆なテンポ運びと、重厚で荘厳な響きを特徴とする解釈で知られ、とりわけワーグナーやブルックナー作品の演奏では比類なき存在と評されてきた。譜面に忠実であること以上に、その場の響きと精神性を重視する指揮姿勢は、同時代の指揮者の中でも異彩を放っていた。

関係者によれば、今回の録音でも細部に過度な修正を加えることはなく、一回一回の演奏に全神経を注ぐ、円熟期ならではの集中力が感じられたという。体調面の不安が囁かれる中での作業であったが、指揮台に立つ姿はなお威厳を失わず、演奏に対する強い意志が周囲に伝わったとされる。

戦前・戦後を通じてドイツ音楽界を見続けてきたクナッパーツブッシュの録音活動がここで一区切りを迎えたことは、一つの時代の終わりを象徴する出来事とも言える。今後、この最後の録音がどのように評価され、後世に受け継がれていくのか、音楽史の観点からも注目される。

— RekisyNews 文化面 【1963年】

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