【東京・上野 12月15日】
東京乗合自動車の子会社である東京遊覧乗合自動車は本日、日本で初めてとなる定期観光バス「ユーランバス」 の運行を開始した。出発地となった上野公園前には午前中から好奇心に満ちた市民が集まり、車体に描かれた大きな「U-RAN」の文字を珍しげに眺めながら写真を撮る姿も見られた。
バスは上野を起点に、浅草、銀座、皇居前広場など東京の主要名所を巡るコースを設定。乗客は決められたルートを座席から眺めながら楽しめる仕組みで、これまでの路線バスとは異なる「観光専用」の概念が大きな話題となっている。運行初便には家族連れや地方からの旅行者が乗り込み、「東京を効率よく見て回れる新しい文化だ」と好評を得た。
東京遊覧乗合自動車によれば、バスガイドが名所の歴史や見どころを説明するサービスも計画されており、外国人観光客の増加も視野に入れているという。市内の観光業者からは、ホテル滞在者向けの専用コースや夜景便の企画案も出ている。関係者は「都市観光を産業として成長させる第一歩になる」と期待を寄せた。
大正後期の東京は交通網の整備が進み、市電・バス・鉄道の相互連絡によって市内移動が飛躍的に便利になりつつある。今回のユーランバス運行開始は、その流れをさらに加速させる観光サービスの誕生として、大きな節目となりそうだ。
— RekisyNews 社会面 【1925年】
