【サンフランシスコ 12月9日】
本日、スタンフォード研究所(SRI)の研究者 ダグラス・エンゲルバート 氏が、画期的なコンピュータシステム oN-Line System(NLS) の公開デモンストレーションを披露し、会場に集まった研究者・技術者から大きなどよめきが上がった。
ハイパーテキスト、マウス、ウィンドウ、ビデオ会議といった機能が一堂に会して披露されるのは世界初で、コンピュータの未来像を一変させる出来事となった。
デモが行われたのはサンフランシスコのブルックス・ホール。エンゲルバート氏は白い箱型の木製デバイスを手に取り、「これがマウスです」と紹介。参加者たちは「画面上のカーソルを自由に動かす」操作に息を飲んだ。
続いて、NLSの画面には文書の構造が階層表示され、エンゲルバート氏はリンクをたどるように項目を移動。“ハイパーテキスト”の概念を世界で初めて実演し、文書同士を自在に行き来できる様子に会場から驚きの声が漏れた。
さらに、遠隔地の研究者と映像・音声でやり取りするビデオ会議、同一文書を複数人で同時編集する共同作業機能も披露。コンピュータを「計算の機械」から「情報を扱う道具」へと進化させる可能性が、目の前で示された格好だ。
参加した技術者は、「未来のオフィスの姿を見た気がする」「これはコンピュータ革命の始まりになる」と語り、各社研究者が次々にメモを取る様子が見られた。一方で、操作には専門知識と大型装置が必要であるため、「一般に普及するには時間がかかるだろう」との見方もある。
しかし、今日のデモは“歴史上最も有名なコンピュータデモ”と呼ばれる可能性があるほど画期的で、研究者の間では“今日から世界が変わった”との声も上がっている。
NLSの登場は、人と機械の関係を根底から変え、新しい情報社会の幕開けを告げた一日となった。
— RekisyNews 科学技術面 【1968年】
アイキャッチ画像 SRI International – SRI International, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=17294444による
