【千葉・野田 12月7日】
本日、千葉県野田町において、同地で醤油醸造を営んできた有力醸造家 8家が合同し、「野田醤油株式会社」 が正式に設立された。
江戸期から続く醤油の名産地・野田で、複数の家が手を結び、近代的な企業経営へ踏み出すのは初めての試みであり、地域産業界から大きな注目を集めている。
合同に参加したのは、茂木家・高梨家をはじめとする8家で、いずれも江戸時代から関東の食文化を支えてきた大規模な醤油業者である。これまで各家が個別に醸造・販売を行っていたが、戦時景気の変動や輸送網の大きな変化を受け、さらに効率的な生産と安定供給を目指すため、共同出資による会社設立に踏み切った。
同社は最新式の設備導入を掲げ、従来の木樽での仕込みに加えて、機械化を取り入れた品質管理・大量生産体制の構築を目指すという。関係者によれば、「良質な大豆と小麦を安定的に仕入れ、海外市場への輸出も視野に入れている」とのことで、醤油製造の近代化を一気に進める構想が語られた。
町民の間では「野田の名を全国に広める絶好の機会」と期待が寄せられている。開業に立ち会った商人の一人は「これからの時代、家業より会社組織の力がものを言う。野田醤油は必ず成長する」と語った。一方で、伝統的な醸造法の維持を求める声もあり、「機械化が味を損なわぬよう十分注意すべき」とする意見も上がっている。
いずれにせよ、今回の合同は、野田醤油業界が時代の変化に対応する大きな転換点となる。
今日の設立は、のちに「キッコーマン」として知られる企業が歩み始めた歴史的な一歩であり、日本の醤油産業全体の近代化に向けた象徴的出来事 といえる。
— RekisyNews 経済面 【1917年】
