【デトロイト 12月1日】
本日、米国ミシガン州デトロイトの自動車メーカー フォード・モーター社 は、ハイランドパーク工場において、世界で初めてのベルトコンベア式生産ラインを正式に稼働させた。これまで試験的に導入されてきた“流れ作業”の仕組みを大規模に本格運用するもので、自動車製造の歴史が大きく転換する瞬間となった。
新方式は、部品を作業員が移動しながら組み立てる従来のやり方とは異なり、車体の側をベルトコンベアが動くことで作業員が定位置で作業を行う仕組みである。これにより、作業手順が細分化され、組立時間が飛躍的に短縮された。フォード社の技術陣によれば、従来12時間以上かかっていたT型フォードの組立作業が、数時間以下にまで短縮される見込みだという。
今朝の稼働開始を見守った関係者からは、ライン上を一定の速度で進む車体を前に、作業員が次々に部品を取り付けていく様子に驚きの声が上がった。工場を訪れた視察者の一人は「これが未来の工場なのだろう。手作業中心の製造が劇的に変わる」と述べ、革新性を強調した。
この方式の導入背景には、T型フォードの需要急増がある。低価格の自動車として人気が高まり、生産が追いつかない状況が続いていた。同社の創業者ヘンリー・フォード氏は、「誰もが手に入れられる自動車を作る」という理念を掲げ、生産効率を極限まで引き上げる方法を模索してきた。今回の生産ライン導入は、その理念実現へ向けた大胆な一歩といえる。
一方で、作業の細分化により「単純作業の繰り返しが増えるのではないか」と懸念する声も工場内から上がっている。フォード社では、作業員の負担に配慮しつつ、新方式への教育や作業環境の改善を進めているという。
それでも、今回の生産ライン導入がもたらす影響は計り知れない。自動車産業だけでなく、他分野の製造業にも波及する可能性があり、デトロイトでは早くも「新工業時代の幕開け」との見方が広がっている。
— RekisyNews 経済面 【1913年】
