【東京 12月1日】
本日、東京府は淀橋浄水場から市内への通水を正式に開始し、東京における初の近代水道が稼働した。これまで井戸水や簡易水道に頼ってきた市民生活にとって、衛生面・防疫面で大きな転換点となる歴史的な一日である。
通水開始は午前10時頃。淀橋の高台に設けられた浄水場では、担当技師らがバルブ操作を行い、ゆっくりと水圧が上がると、施設内に歓声が上がった。場内では近隣住民も見守る中、濾過槽から送られた透明な水が配水池を満たし、配水管を通じて市内へと送り出されていった。
今回の近代水道は、数年前より進められてきた大規模な事業の成果であり、砂による濾過設備や鉄管による配水網を備える。専門家は「井戸水に比べて水質が安定し、感染症対策として極めて効果的」と述べ、衛生改善への強い期待が寄せられている。実際、これまでコレラなどの流行に悩まされた東京にとって、安全な飲料水の供給は長年の課題であった。
市内では、本日から順次水道栓の利用が始まり、早速ためしに蛇口をひねる住民の姿が見られた。四谷の商店主は「井戸を汲まずに済む日が来るとは。水がこんなに澄んでいる」と目を丸くし、主婦からは「料理も洗い物もずっと楽になる」と喜びの声があがった。
一方で、旧来の井戸に頼る地域もなお残っており、配水網の拡張はこれからの課題とされる。また、水道料の負担をめぐっては慎重な議論も続き、府当局は段階的な普及を図る姿勢を示している。
それでも、今回の通水は東京の都市基盤を大きく前進させた出来事である。生活の衛生水準を押し上げ、急速に膨らむ市街地に安定した水供給をもたらすことで、今後の都市発展に大きく寄与すると見られている。
— RekisyNews 社会面 【1898年】
