【東京 11月24日】
本日午前、国内証券業界四大証券の一角をなしてきた山一證券株式会社(本社:東京都中央区)が、取締役会において自主廃業を正式決定したことを発表した。事実上の経営破綻であり、創業100年を超える老舗証券会社の突然の幕引きに、国内外の金融市場に激震が走っている。
会見に臨んだ野澤正平社長は、声を震わせながら「社員は悪くありません。どうか社員を責めないでください」と訴え、報道陣の前で号泣。会場は異様な空気に包まれた。その発言は瞬く間に全国に報じられ、世論に大きな衝撃と同情をもって受け止められている。
廃業の理由について、同社はバブル期に行われた巨額の損失補填や簿外債務(約2600億円)の存在などが経営の根幹を揺るがし、もはや事業継続が困難と判断したと説明。大蔵省による一連の金融検査を受け、不正の隠蔽体質も浮き彫りとなった。
山一證券は1897年に創業し、「堅実経営」を標榜して戦後の日本経済とともに成長。高度経済成長期には証券業界を牽引する存在として、個人投資家からも高い信頼を得ていた。しかし、バブル崩壊後は経営不振が続き、不良債権や損失補填問題が経営を圧迫していた。
今後は、廃業に向けて監理ポスト入りし、顧客資産の保全と整理業務を中心に対応する方針。大蔵省も今回の事態を受けて、金融制度の信頼回復と再発防止に向けた対応を進める構えを見せている。
“日本株式会社”の象徴的存在が自ら幕を引いた──その余波は、金融界全体に静かに、しかし確実に広がっている。
— RekisyNews 経済面 【1997年】
