【ワシントン 11月17日】
米国特許商標庁は本日、スタンフォード研究所(SRI)の研究者ダグラス・エンゲルバート氏が開発した新しい入力装置「X–Y位置指示器(通称:マウス)」に関する特許(U.S. Patent 3,541,541)を正式に認可した。机上で手を動かすだけで画面上のカーソルを操るという仕組みは、計算機操作の概念を一変させる可能性を秘めている。
装置は木製の小箱に機械式の車輪を組み込み、平面上の移動を電気信号に変えてコンピュータへ送るもの。利用者は箱を握り、指先の感覚で画面内の位置を直感的に操作できる。数年前にサンフランシスコで行われた「オンライン・システム(NLS)」の公開実演では、画面上の文字選択やリンク移動などが披露され、来場者に強い印象を与えていた。
エンゲルバート氏は、人間とコンピュータが協働する未来を構想し、情報の整理・検索・編集を直感的に行える道具としてマウスを考案した。同氏は「計算機を専門家だけの道具に留めてはならない。多くの人が知識を扱える世界を実現したい」と語っている。
現在の大型コンピュータはパンチカードやキーボード入力が主流だが、研究者の間では「画面と指先を結ぶ新しいインターフェース」として本装置への期待が高まっている。マウスが未来の標準装置となるか、今後の応用が注目される。
— RekisyNews 科学技術面 【1970年】
