【東京 11月5日】
本日、トヨタ自動車工業株式会社は、新型小型乗用車「カローラ」を正式に発表、全国の販売網を通じて発売を開始した。高度経済成長の波に乗り、一般家庭でもマイカー保有が広がる中、トヨタは「国民車構想」に応えるべく、カローラを開発。“80点主義+α”をキャッチフレーズに掲げ、量産体制と価格の両立に挑んでいる。
初代カローラは排気量1077ccの水冷直列4気筒エンジンを搭載し、最高出力60馬力。トランスミッションは4速フロアシフトで、最高速度は140km/hに達するという。燃費性能も16km/L(10モード換算)と実用性に優れ、通勤や買い物など日常の足として最適とされる。
注目すべきはその販売価格で、スタンダードモデルは約43万円。これは中間所得層でも十分手の届く水準であり、三種の神器に続く“第四の家庭財”としてのクルマの普及を一段と加速させることが期待される。
また、今回のカローラはトヨタが初めて顧客ニーズを徹底調査し、市場志向で開発したモデルでもある。小型車ながらゆとりのある室内空間や、上級感のある内装デザインは、従来の廉価車とは一線を画す仕上がりで、家族での利用を強く意識したものとなっている。
この日、東京・日本橋のトヨタショールームには多くの来場者が詰めかけ、カローラの実車に熱い視線が注がれた。来場者の中には「手が届く価格でこの装備は驚きだ」「ボンネットのデザインも欧米車のようでかっこいい」といった声も聞かれた。
カローラの名称はラテン語で「花の冠」を意味し、国民の暮らしに花を添える存在になってほしいという願いが込められている。
トヨタは今後、輸出市場への展開も見据えており、小型乗用車部門での地位確立を目指す考え。カローラが“第二の大衆車ブーム”の火付け役となるか、その動向が注目される。
— RekisyNews 経済面 【1966年】
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