伝説のOS「Multics」、ついに終焉──最後の稼働システムが停止

【マサチューセッツ州 10月30日】

本日、歴史的なコンピューターオペレーティングシステム「Multics(マルチックス)」の最後の稼働マシンが正式に停止された。1960年代から30年以上にわたり運用されてきたMulticsは、その高度なセキュリティ、仮想記憶、階層型ファイルシステムなど、現代OSの原型を数多く築いた先駆的存在であった。

Multicsは、1965年にMIT(マサチューセッツ工科大学)・ベル研究所・GE(ゼネラル・エレクトリック)の3者が共同でスタートさせたプロジェクト。「Utility computing(公共サービス型コンピューティング)」を目指し、当時としては画期的な「時間共有システム」として設計された。開発初期にはUNIVAC、のちにHoneywell製のメインフレームで運用された。

後にベル研究所がプロジェクトから撤退するが、その経験をもとにケン・トンプソンらがUNIXを開発したことは、現在のLinuxやmacOS、Androidを含むOSの進化に多大な影響を与えている。

今回、カナダのカルガリー大学で最後まで稼働していたMulticsシステムが停止され、ついに商用・学術を問わず全世界でMulticsマシンは稼働を終えることとなった。

Multicsが生んだ数々の技術的理念──セキュリティ中心の設計、動的リンク、コマンドラインインターフェースなどは、今なお情報技術の根幹を支えている。その幕引きは、ひとつの時代の終わりを象徴する出来事とも言えるだろう。

— RekisyNews 科学技術面 【2000年】

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