【ロサンゼルス 10月29日】
本日、アメリカ国防総省の研究機関主導の通信ネットワーク「ARPANET(アーパネット)」を介し、2台の遠隔地コンピューター間で初めてデータ通信が行われた。 これにより、人類は初めて“ネットワークを通じた情報のやり取り”という歴史的瞬間を迎えた。
接続は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とスタンフォード研究所(SRI)との間で実施され、UCLA側のホストコンピューターから「login(ログイン)」の文字列をSRI側に送信する実験が行われた。 初回の送信では「lo」の2文字までは送信に成功したものの、3文字目でシステムがクラッシュするというハプニングも発生。しかし、数時間後には無事に全体の送信が成功し、両者の接続が確立された。
このARPANETは、高信頼な通信手段を目的として米国防高等研究計画局(ARPA)が主導しているプロジェクトで、研究機関間のリソース共有や高速通信の実現を目指している。今後は、ユタ大学やカリフォルニア大学サンタバーバラ校など、複数の研究機関が参加する予定であり、全国規模のコンピューターネットワークが形成される見込みだ。
研究者たちはこの接続を「新しい通信の時代の幕開け」と捉えており、将来的には教育・行政・科学研究を超えて、産業や社会全体に影響を与える可能性も秘めている。
目には見えぬ“電子の回廊”が、世界をつなぐ未来を予感させる1日となった。
— RekisyNews 科学面 【1969年】
