精密機器の国産化へ新会社設立──高橋・山下両氏ら、顕微鏡開発を主眼に「高千穂製作所」創業

【東京 10月12日】

本日、東京市本郷区において、新たな精密機器製造会社「高千穂製作所」が創立された。設立の中心となったのは、医薬品卸の高橋鐵三郎氏と、かねてより工学・光学技術に通じた山下長氏で、今後は顕微鏡の国産化をはじめとする光学機器の研究・製造に乗り出す構えだ。

高千穂製作所は、医療現場や理化学研究所で使用される精密光学機器の多くを海外製品に依存している現状を打破し、我が国独自の技術でそれらを製造・供給することを目指す。初期の製品群としては、医療診断に用いられる単眼鏡顕微鏡の製造が予定されており、すでに試作機の設計段階に入っているという。

山下氏は本紙の取材に対し、「欧州の技術に頼らず、日本人の手で正確かつ耐久性に富んだ顕微鏡をつくりたい。いずれは世界に誇れる製品を」と語り、技術開発への強い意欲をのぞかせた。

会社名の「高千穂」は、日本神話における霊峰にちなみ、「高き理想と精緻なものづくり」の象徴とされる。創業者らは、将来的には光学機器のみならず、医学・工学分野での貢献を視野に入れているという。

世界大戦後の復興とともに、日本の産業技術もまた大きな転換期を迎えている中、国産精密機器の草分けを担うこの新会社の動向に、医療界・学術界からも期待の声が上がっている。

— RekisyNews 経済面 【1919年】

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