【ペンシルベニア州フィラデルフィア 10月2日】
本日午後11時45分、アメリカ陸軍が開発・運用してきた世界初の電子式汎用コンピュータ「ENIAC(エニアック)」が、その稼働を正式に終了した。1946年の稼働開始から約9年半、弾道計算や核実験の解析など、軍事・科学分野における数々の計算業務を支え続けてきた巨大な「電子頭脳」が、ついに静かに電源を落とした。
ENIACは、ペンシルベニア大学のジョン・モークリー博士とJ・プレスペー・エッカート博士によって設計され、1946年に完成。1万8000本の真空管を用い、30トンを超える重量を持つこの機械は、それまでの計算機とは桁違いの速さと複雑な処理能力を誇り、現代の計算機科学の礎を築いたとされている。
稼働停止は、運用拠点であるアバディーン性能試験場にて行われ、関係者や研究者たちが見守る中、最後の命令処理が完了した後、静かに主電源が落とされた。
ENIACの引退は、コンピュータ技術の急速な進展を象徴する出来事とも言える。より小型で高性能な次世代機が次々と登場しており、ENIACの後継となるUNIVACなど商用機の時代がすでに始まりつつある。
「ENIACは終わったが、その影響は終わらない」と語る関係者の言葉通り、この電子頭脳の偉業は、後世の計算機科学と情報社会に多大な道を拓いたのであった。
— RekisyNews 科学技術面 【1955年】