T型フォード、ついに登場──フォード社が大衆向け自動車を正式発売

【デトロイト 10月1日】

本日、米国ミシガン州デトロイトに本社を構えるフォード・モーター社は、かねてより開発を進めてきた新型自動車「モデルT(T型フォード)」の販売を正式に開始した。価格は850ドルで、大衆に手が届く本格的な自動車として注目を集めている。

創業者ヘンリー・フォード氏は、これまでの高価な自動車とは異なり、一般の労働者や農民でも購入可能な実用的な車を目指し、数年にわたって改良を重ねてきた。モデルTは軽量なバネ鋼と新素材の使用により、丈夫で整備がしやすく、未舗装道路にも対応できる設計となっている。

動力には直列4気筒エンジン(20馬力)を搭載し、最高速度は時速40マイル(約64キロ)に達する。ギア操作は簡略化されており、運転初心者でも習得が容易であると関係者は語る。さらに、車体は取り外し可能な部品構造となっており、整備や交換がしやすい点も特徴だ。

車体の製造は、デトロイトのピケット・ストリート工場にて行われており、今後、より効率的な量産体制を導入することで価格を段階的に下げる構想も明かされている。フォード氏は「馬ではなく、誰もが自分の車で移動できる時代が来る」と自信を示しており、早くも注文が全米各地から寄せられている。

交通の主役が馬車から自動車へと変わる時代の到来を告げるモデルTは、まさにアメリカの交通革命の始まりを象徴する存在となりそうだ。

— RekisyNews 経済面 【1908年】

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