【京都 9月23日】
本日、京都市下京区十軒店において、地元商人・山内房治郎氏が新たに花札製造と販売を主業とする商いを開始した。屋号は「任天堂(にんてんどう)」と称し、正式には任天堂骨牌(こっぱい)、あるいは山内房治郎商店として届け出が行われた。
房治郎氏はこれまで薬種商や玩具商として生計を立てていたが、このたび花札に特化した製造販売業へと専念することを決断。創業の地は、京都でも古くから商いが盛んな地域であり、これからの発展に期待がかかる。
花札は明治期に入って以降、徐々に庶民の間でも人気が高まっており、特に「八八」などの遊技が流行。任天堂は、こうした時代の風潮を背景に、品質と意匠に優れた花札を提供することで差別化を図る構えだ。店舗では早くも「大統領」や「天狗」などをあしらった豪華な札が展示され、初日から地元客の関心を集めている。
「世間が喜ぶ遊び札を、心を込めて作り続けていきたい」と房治郎氏は語る。将来的には地方への卸売りや、他種のかるた、玩具製造への展開も視野に入れているという。
京都は古来より職人の街。そこに新たに生まれた札屋が、どのような歩みを見せてゆくか注目される。
— RekisyNews 経済面 【1889年】