【大阪 9月20日】
今夜、大阪の紡績工場にまばゆい光が灯った。大阪市内にある大阪紡績会社(通称:大阪紡績所)が、日本の民間企業として初めて本格的に電灯を導入し、夜間操業を可能にする画期的な設備転換を行った。
導入されたのは、最新鋭の「アーク灯」と呼ばれる電灯で、炭素棒の間に電流を流して光を発する仕組み。今回、大阪紡績ではこのアーク灯6基を工場内に設置し、夜間でも紡績機械の稼働が可能となった。これにより、24時間体制での操業が視野に入り、生産性の大幅な向上が期待されている。
大阪紡績は、渋沢栄一らの支援により設立された先進的な紡績会社で、すでに国内で最も大規模な紡績能力を誇っている。今回のアーク灯設置は、東京電燈会社や神戸の外国人居留地での試験的な使用に続き、日本の民間産業における本格使用の第一例となる。
工場周辺では、夜空を切り裂くような強い光が注目を集め、見物に訪れた市民たちは「これが噂の電灯か」「昼のように明るい」と感嘆の声を上げていた。
今回の電灯導入により、国内の産業界にも**“電化”の波が押し寄せる兆し**が見えてきた。従来、夜間照明にはガス灯や油灯が使われてきたが、アーク灯は明るさ・安全性・効率の点で格段に優れており、今後の普及が期待される。
産業と技術の両輪によって走り出す“近代日本”の姿を、大阪の一工場がまさに照らし出している。
— RekisyNews 経済面【1886年】