【東京 9月16日】
本日、東京市本郷区雑司ヶ谷において、東洋と西洋の哲学を広く研究・教授するための教育機関「哲学館」が開設された。創設者は、仏教学者であり哲学者の井上円了(いのうえ・えんりょう)氏。今後は日本初の本格的な哲学教育の場として、多くの青年が学び舎に集うことが期待されている。
井上氏は、東京大学で哲学を修めた後、仏教界と学界の双方で活動を続けており、「妖怪博士」としても知られる独特の視点を持つ思想家である。哲学館の創立にあたっては、「哲学をもって世を開く」ことを理念とし、宗教・道徳・論理などの根本問題に対し、理性的な探究を重んじる姿勢を示した。
本日の開館式では、井上氏自身が登壇し、「学問はすべて人間の心の働きを解明するものであり、その中枢に哲学がある」と力強く語った。また、将来的には哲学のみならず、文学や倫理学、教育学などの関連分野にも広げ、国民の教養向上に資する機関とする構想も明らかにされた。
哲学館の校舎は木造ながらも堅牢な造りで、教室のほか図書室も備えており、欧州から輸入された哲学書も多数所蔵しているとのこと。学生は仏教系のみならず、広く一般の青年にも門戸を開いており、特定の宗派に偏らない自由な思想の探求が尊重される方針だ。
なお、哲学館は今後、文部省への正式な学制編入も視野に入れており、日本の高等教育機関としての新たな展開が期待されている。
— RekisyNews 教育面 【1887年】