テキサス・インスツルメンツのキルビー技師、電子回路を“1つ”に統合 — 画期的技術「集積回路」を初公開

【ダラス 9月12日】

 米テキサス州ダラスに本社を置く**テキサス・インスツルメンツ(TI)**社において本日、技術者ジャック・キルビー(Jack Kilby)氏(34)が、電子工学の未来を変える可能性を秘めた画期的な「集積回路(Integrated Circuit, IC)」の動作デモンストレーションを社内で初めて成功させた。

この試作品は、従来バラバラに配置されていた抵抗・コンデンサ・トランジスタなどの電子部品をゲルマニウム基板の上に一体化したもので、わずか数センチ角の板に“完全な回路”を形成するという、これまでにない発想の製品だ。

キルビー氏は、昨年同社に入社したばかりの新人技術者。夏季休暇中に休まず研究を続けた結果、「電子部品を一つにまとめる」構想を具現化するに至ったという。彼のメモには8月の段階で「モノリシック・アイデア」の詳細が記されており、今回のデモはそれを裏付ける実験成果となる。

TIの関係者は「この技術が実用化されれば、電子回路の小型化・軽量化・量産性が飛躍的に高まり、軍事機器、計算機、通信機器など多くの分野に革命をもたらす」と語った。

キルビー氏自身は冷静に「これは第一歩に過ぎない。今後は実装方法、信頼性、量産体制の確立が課題となるだろう」と述べ、さらなる研究の必要性を強調した。

真空管からトランジスタ、そして“集積”へ。電子工学の進歩が新たな段階に入ったことを示す歴史的な一日となった。

— RekisyNews 科学技術面【1958年】

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