【東京 9月3日】
若き起業家・孫正義氏(24)が、本日付で「株式会社ソフトバンク」を東京都で正式に設立した。資本金は1000万円。今後はパソコン関連ソフトの流通および出版事業を中心に、急成長する情報産業分野でのビジネス展開を目指すとしている。
孫氏は、在日韓国人二世として福岡県に生まれ、渡米後はカリフォルニア大学バークレー校で経済学を専攻。留学中に米国の技術革新やベンチャー文化に触れた経験が、今回の起業につながったという。帰国後は日本の市場環境を見据え、まだ黎明期にあるパソコン業界の将来性に賭ける道を選んだ。
新会社「ソフトバンク」は、ソフトウェアの流通卸と専門誌の発行を2本柱とし、企業や個人向けに最新のパソコン情報と製品を提供するという。特に、全国のパソコンショップ向けに効率的な仕入れ網を構築し、米国からの輸入ソフトも積極的に取り扱う方針だ。
本日都内で開かれた記者発表にて、孫氏は「日本にも、米国のようにソフトウェアのエコシステムを育てる土壌が必要。10年後、必ずや我々がこの国のIT産業をけん引する存在になる」と意気込みを語った。
日本のパソコン市場は現在、NECの「PC-8001」などの登場を契機に個人需要が拡大中であり、関連ソフトの整備が急務とされている。一方で、流通や情報提供体制には未整備な部分も多く、同社の取り組みには業界内からも注目が集まっている。
弱冠24歳の若者が立ち上げた一企業が、日本のIT社会の夜明けにどのような役割を果たすのか。新たな風が、静かに吹き始めている。
— RekisyNews 経済・産業面 【1981年】