JR九州・上山田線、73年の歴史に幕 最終列車に別れの拍手

【福岡県嘉穂郡 8月31日】
福岡県を走るJR九州・上山田線(新飯塚~上山田、16.1キロ)が31日、73年の歴史に幕を下ろした。石炭輸送の衰退と利用客の減少により、この日限りで廃止。沿線住民や鉄道ファンが各駅に集まり、最終列車を見送った。

上山田線は1915年に開業し、かつては筑豊炭田から産出される石炭を運ぶ重要路線として賑わった。しかしエネルギー革命に伴う炭鉱閉山が相次ぎ、貨物需要は急速に縮小。さらに人口減少と自家用車の普及も重なり、近年では1日あたりの利用者数が200人を下回る状況となっていた。

この日、午後7時40分に新飯塚駅を出発した最終列車は、沿線住民の見守る中をゆっくりと走り抜けた。ホームでは、家族連れやかつての炭鉱関係者、そして全国から訪れた鉄道ファンの姿も見られ、「ありがとう」「お疲れさま」といった声が飛び交った。到着した上山田駅では、運転士が帽子を取り、深く一礼。乗客と沿線住民から大きな拍手が送られた。

JR九州は「赤字解消のため苦渋の決断だった」としつつも、代替交通として西鉄バスの増便などを進める方針を示した。一方で、長年にわたり地域を支えた鉄路の消滅に、住民からは「不便になる」「寂しい」といった声も上がっている。

最終列車を見送った地元の70代男性は、「炭鉱で働いていた頃、毎日この列車で通った。まさかこんな日が来るとは」と目を潤ませた。
かつての炭鉱全盛期を知る上山田線は、地域の記憶とともに静かに幕を閉じた。

— RekisyNews 社会面 【1988年】

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