豊田自動織機から自動車部門が独立 「トヨタ自動車工業」設立

【愛知・刈谷 8月28日発】

豊田自動織機製作所(本社・愛知県刈谷町)は本日、自動車製造部門を分離し、新たに「トヨタ自動車工業株式会社」(本社・愛知県豊田町)を設立したと発表した。資本金は2,400万円で、創業者・豊田喜一郎氏(39)が初代社長に就任する。国産自動車の生産を本格化させる体制が整い、国内産業界から大きな注目を集めている。

トヨタ自動車工業は、昨年完成した小型乗用車「A1型」をはじめ、トラック・バスの量産を計画。日本国内では依然として米国車のシェアが高く、フォードやシボレーが市場を席巻しているが、政府は「国産自動車振興計画」を推進中で、今回の独立はその流れに沿ったものといえる。

本日の設立発表会で豊田社長は「国産技術による自動車づくりを進め、いずれは世界に挑む企業となりたい」と抱負を語った。会場には地元の商工関係者や銀行筋も多数詰めかけ、「いよいよ愛知から日本独自の自動車産業が動き出す」と期待の声が上がった。

一方で、自動車産業は巨額の設備投資と資金調達が不可欠で、経営リスクも大きい。銀行関係者は「国内市場は未成熟で、当面は軍需向けトラックの需要に依存せざるを得ない」と指摘。すでに陸軍向け車両の試作依頼も進んでおり、軍部との関係強化が見込まれている。

自動車は今や「走る工場」と呼ばれる先端技術の結晶であり、わが国産業の発展を左右する存在だ。

小さな町工場から生まれた新会社は、国産自動車の未来を切り開くことができるのか、大きな関心が寄せられている。

— RekisyNews 経済・産業面 【1937年】

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