大手化学繊維メーカー・興人、会社更生法を申請 負債2,600億円で事実上倒産

【東京 8月28日発】

化学繊維大手の株式会社興人(本社・東京中央区)は本日、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、受理された。負債総額は約2,600億円に達し、戦後の繊維業界を支えてきた老舗メーカーは、事実上の倒産に追い込まれた。戦後復興を象徴する企業の崩落に、業界と市場には衝撃が走っている。

興人は大正期に設立され、レーヨンや合成繊維を中心に事業を拡大。戦後は国策会社としても注目され、ピーク時には年商2,000億円を超えるまでに成長した。しかし、1973年の第一次石油危機を契機に原料価格が高騰、繊維需要は急速に冷え込んだ。さらに、海外勢との価格競争が激化したことで収益が悪化し、資金繰りは限界に達していた。

本日の会見で経営陣は、「外部環境の急変に加え、過大な設備投資が重荷となった。再建のためには法的手続き以外に道がなかった」と説明。現在は管財人のもとで事業の継続を目指す方針だが、再建への道のりは険しいと見られる。

東京証券取引所では、興人株が売り気配のまま値がつかず、関連銘柄も軒並み下落。市場関係者は「繊維業界全体への連鎖懸念が強まり、他社の資金繰り不安も高まる」と語る。大阪の化学繊維工場では、従業員から「まさかうちが倒れるとは」「給料はどうなるのか」と不安の声が上がった。

高度成長期を支えた名門メーカーの突然の失速は、日本経済全体に揺らぎを与えつつある。

戦後復興の立役者だった興人の行方は、産業界の試金石となりそうだ。

— RekisyNews 経済・産業面 【1975年】

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