三菱銀行、設立 商工金融の中枢を担う新たな器

 【東京 8月25日】

本日、三菱合資会社の金融部門を母体とする「三菱銀行」が正式に発足した。政府の認可を受け、従来グループ内で担ってきた資金決済・為替・手形業務を商業銀行として外向けに拡張する。社内集中の勘定を改め、預金受入と手形割引、企業向け融資、国内外為替を柱に据える方針だ。本店は丸の内の社屋街区に置かれ、対外信用の強化と資金調達の多様化を急ぐ。

新行は海運・鉱業・造船・商事など系列各社の資金繰りを一元化しつつ、一般商工業者への融資窓口も広げる。貿易金融では信用状発行や船荷証券割引を整え、海外の通信社・銀行とのコルレス網を順次拡充。ロンドン、ニューヨーク、上海方面の為替直結を視野に、証券引受や社債発行の周辺業務も検討するという。内部管理では決済・資金繰りの日次統制を導入し、信用審査と担保評価の基準化を進める。

財界は「大量生産と外航貿易の時代に見合う器ができた」と歓迎する一方、産業資本と金融の結合が競争を歪めぬよう透明性確保を求める声もある。三菱銀行の参入で、三井・住友・安田など既存大行との競争は激化必至だ。戦後の物価変動と原料需給の揺らぎが続くなか、企業の資金需要は膨らむばかり。新銀行が市場の資金を産業へ円滑に循環させられるか―丸の内から放たれた一手に、経済界の視線が集まっている。

— RekisyNews 経済・金融面 【1919年】

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