【長野・飯田/岐阜・中津川 8月23日】
本日、中央自動車道の飯田IC-中津川IC間が開通し、約8.6キロの恵那山トンネルを含む長大山岳区間が一気に供用開始となった。信州と東濃を直接結ぶ高速ルートが整い、名古屋圏と伊那・飯田地域の所要時間は大幅に短縮される見込みだ。冬季の積雪や国道の峠越えに左右されにくい安定輸送が実現し、物流と観光に弾みがつく。
恵那山トンネルは換気坑、非常退避帯、非常電話、消火設備、照明を備え、管制室による24時間監視体制を敷く。トンネル内ではラジオ再送信で交通情報を流し、速度規制と車間確保の徹底を呼びかける。難工事を経て貫通した“中央の壁”が、ついに車輪の道として開いた。
開通効果は広域に及ぶ。木曽路・妻籠宿や馬籠宿、恵那峡など観光地へのアクセスが向上し、果樹や高原野菜など信州産品の出荷も加速。名古屋―飯田―甲府―八王子へと伸びる広域動脈の一角が埋まり、東名・名神との結節で中部と関東の交流が一段と密になる。国道19号・153号の混雑緩和も期待される。
当面は対面通行の2車線運用で、追越し禁止区間が長い。事業者は車間距離の確保、速度抑制、灯火の早期点灯を訴え、事故防止に万全を期すという。今後は四車線化やサービスエリアの整備、災害時の代替ルート確保が課題となる。
開通式ではテープカットと祝賀走行が行われ、沿線の小学生が旗を振って車列を見送った。「名古屋が近くなる」「冬でも安心して出荷できる」――地域の声は、長い山の闇を抜けた明るさに満ちている。
— RekisyNews 経済・交通面 【1975年】