【福岡・三池 8月18日】
九州有数の産炭地として知られる三池炭鉱が本日、政府から三井財閥へ払い下げられることが正式に決定した。これにより、同炭鉱は官営から民間経営へと移行し、今後は三井の資本と組織力を背景に大規模な開発が進められる見通しである。
三池炭鉱は幕末期から採掘が行われ、明治政府のもとで近代的な経営が進められてきた。しかし政府の財政整理と殖産興業の方針により、主要産業を民間へ委ねる流れが加速しており、今回の払い下げもその一環とされる。
石炭は製鉄、鉄道、蒸気船の燃料として不可欠であり、国家経済を支える基幹資源である。三井はすでに全国各地で商業・金融において強固な基盤を築いており、今回の獲得によって重工業分野への進出を一層本格化させるとみられる。関係者は「三池は埋蔵量豊富で質も良い。三井の手により一層の生産拡大が可能になる」と期待を語った。
一方、地域社会では不安の声も上がっている。官営時代に雇用されていた鉱夫やその家族は、民間経営への移行で待遇や賃金がどのように変わるのか注視している。地元商人の一人は「経済の活性化にはつながろうが、資本の力に労働者が翻弄されぬよう願う」と語った。
政府にとって今回の払い下げは財政負担の軽減に直結するが、同時に資本の集中が進むことへの懸念も指摘されている。とはいえ、三池炭鉱の経営が安定し、生産力が高まれば、国内産業の発展に寄与するのは確実とみられる。
日本の近代化が進む中で、三井財閥による三池炭鉱の取得は、単なる経営の移管にとどまらず、国家産業の方向性を占う象徴的な出来事となった。
— RekisyNews 経済・産業面 【1888年】