【ニューヨーク 8月17日】
本日、発明家ロバート・フルトンの設計による蒸気船「クラーモント号」が、ニューヨークから州都オールバニーに向けて初めての試験航行を行った。外輪で推進する独特の船体は、多くの市民の注目を集め、ハドソン川沿いの岸辺には見物人が列をなし、煙を上げて進む姿に驚きの声を上げた。
クラーモント号は全長約40メートル、石炭を燃料として蒸気機関を稼働させ、両舷の大きな外輪を回転させて進む。これまでの帆船が風向きや天候に大きく左右されるのに対し、蒸気船は安定した速度で進むことができるのが特徴だ。初日の運行では平均時速約5マイルを記録し、予定通り川を遡った。
航行を見守った市民の中には「まるで動く工場のようだ」「人の力でも風の力でもない、まさに火の力で進んでいる」と驚嘆する声が相次いだ。一方で、黒煙や大きな騒音を不安視する者もおり、川漁師の一人は「魚が逃げるのでは」と懸念を口にした。
フルトンは「この船が普及すれば、人や物の移動は格段に速くなり、都市と都市を結ぶ経済の血脈となる」と語る。商人たちも「商品を素早く運べるなら取引が広がる」と期待を寄せている。
試験航行は数日間続けられ、航路の実用化が検証される予定だ。もし成功すれば、ニューヨークとオールバニーを結ぶ定期運航が開始され、内陸と港町の往来は飛躍的に活発化すると見られる。
蒸気の力で進む船がもたらす未来は、すでに岸辺の群衆の目に強い印象を刻みつけた。
— RekisyNews 経済・社会面 【1807年】