【パナマシティ 8月15日】
中米パナマ地峡を貫く大運河が本日、正式に開通し、世界の海運史に新たな一頁が刻まれた。開通式は太平洋側のバルボア港と大西洋側のコロン港で同時に行われ、各国からの使節や技術者、市民らが集まり、完成を祝った。
最初に通航したのは米国商船「アンスコナ号」。午前中にガトゥン閘門を通過し、運河をゆっくりと進んだ。航程約80キロは閘門や人工湖を含む複雑な構造で、所要時間はおよそ10時間。従来、南米南端のマゼラン海峡やホーン岬を迂回していた航路に比べ、大幅な距離と時間の短縮が実現する。
運河建設はフランスによる1880年代の着工に始まるが、熱病や黄熱病による多数の死者と資金難で中断。その後、米国が1904年に事業を引き継ぎ、大規模な防疫・土木技術を投入して完成に至った。総工費は3億8千万ドル、掘削土砂は約2億立方メートルに及ぶ。
開通式で米国当局者は「この運河は世界貿易と平和の架け橋となる」と演説。参加したパナマ政府代表も「地峡が海峡に変わった」と喜びを表した。
各国の海運業界からは、運賃低下と物流効率化への期待が高まる一方、戦時下の利用や中立性の確保を巡る議論も起きている。現地商人は「運河の両岸に新しい街と産業が生まれるだろう」と話し、地域経済の発展を見込んでいる。
大洋を結ぶ新たな水の道は、国際海運の地図を塗り替え、20世紀の世界経済に深い影響を与えることになりそうだ。
— RekisyNews 国際面 【1914年】