森永製菓、国産初のインスタントコーヒー発売 “お湯だけ”の新習慣が家庭へ

【東京 8月10日】
森永製菓は本日、日本初の国産インスタントコーヒーを発売した。輸入品が主流だった即席コーヒーに国産が参入するのは初めてで、同社は「家庭で手軽に本格の香味を」を掲げ量産体制を整備。市場では“お湯を注ぐだけ”の新しい飲用スタイルが一気に広がるとの見方が出ている。

価格は1杯あたり約10円を想定。容器から適量をカップに入れて湯を注ぐだけで飲める利便性を前面に出し、量販店・百貨店のほか職域売店でも扱いを開始する。販促では試飲デモとレシピ配布を組み合わせ、ミルクや砂糖と合わせた“モーニング一杯”の需要をねらう。

背景には、日本のコーヒー消費量が欧米に比べて小さい現状がある。森永は「家庭内での飲用ハードルを下げれば、喫茶店中心の嗜好から“家コーヒー”が拡がる」と読み、1959年に生産設備を導入して準備を進めてきた。

輸入のインスタントに比べて供給安定と価格の読みやすさが期待される一方、専門家は「溶解性・香りの再現が品質評価の鍵」と指摘。森永は原料配合と乾燥工程の最適化で対抗し、まず都市部から出荷を拡大する。

小売り各社は棚の入れ替えを急いでおり、朝食・職場休憩・来客対応まで用途が広がる見通し。編集部試飲では「湯だけで立ち上がる香り」「後味の軽さ」が印象に残った。“国産インスタント元年”となるか、年末商戦の動きが注目される。

— RekisyNews 経済部【1971年】

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