老舗「ミツワ石鹸」が倒産 ―― オイルショックと洗剤近代化の波に呑まれる

【東京 3月24日】

戦前より「石鹸の王者」として親しまれてきた大手老舗メーカー、ミツワ石鹸が本日、ついに倒産した。明治時代から続く伝統の暖簾(のれん)を掲げ、日本の清潔文化を牽引してきた同社だったが、激動する経済環境の荒波に抗いきれず、その歴史に一旦の幕を下ろすこととなった。

倒産の主因は、急速に進んだ市場の構造変化と外的要因の重なりにある。1960年代以降、洗濯機の影響で需要の主役が固形石鹸から合成洗剤へと移行する中、同社は合成洗剤事業への参入に遅れをとり、競合他社にシェアを奪われていた。さらに、1973年末に発生した第一次オイルショックによる原材料高騰と資源節減の動きが、経営を根本から揺さぶった。消費者の買い溜め騒動を経て、冷え込んだ景気が老舗の財務基盤を直撃した形だ。

同社の高度な生産設備および広く知れ渡った「ミツワ」の商標については、P&Gサンホーム(プロクター・アンド・ギャンブル・サンホーム)が買収することが決定している。これは、ミツワ石鹸が以前より旧日本サンホーム(第一工業製薬、旭電化工業、ライオン歯磨の合弁)と協力関係にあった縁によるものだ。外資系大手の資本傘下に入ることで、名門の技術とブランドは新たな形態で継承されることとなる。

「三つの輪」のマークで親しまれたミツワ石鹸の消滅は、単なる一企業の破綻にとどまらず、日本の石鹸産業における「伝統的家業」から「近代的化学工業」への完全な転換を告げる象徴的な事件といえる。昭和の茶の間で流れたあの懐かしいCMソングとともに、一つの時代が静かに終わろうとしている。

— RekisyNews 経済面 【1975年】

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