【愛知県犬山市 3月18日】
愛知県犬山市の入鹿池(いるかいけ)のほとりに本日、広大な野外博物館「博物館明治村」が開業した。高度経済成長に伴う開発の波により、日本各地で次々と解体・消滅の危機に瀕していた明治時代の貴重な建築物を一堂に集め、永久に保存しようという壮大な試みがついに形となった。初代村長には、国民的人気を持つ語り手・徳川夢声氏を迎え、開村式は多くの関係者と招待客で華やかに執り行われた。
村内には、明治宮廷建築の白眉である「西郷従道邸」や、重厚なレンガ造りの「三重県庁舎」、さらには世界的建築家フランク・ロイド・ライトの手による「帝国ホテル中央玄関」など、移築された名建築が立ち並ぶ。これらは単なる展示物ではなく、当時の職人の技や人々の生活の記録そのものである。谷口吉郎(建築家)と土川元夫(名古屋鉄道会長)の両氏が、「明治の文化を後世に伝えたい」という情熱のもとに私財と時間を投じて実現させたこの場所は、まさに歴史のタイムカプセルと呼ぶにふさわしい。
徳川村長は開村の挨拶で「ここは単なる古い建物の集積所ではない。日本の近代化を歩んだ先人たちの魂が息づく村である」と、その意義を強調した。来場者たちは、文明開化の象徴であるレンガの道を歩き、ガス灯や市電が走る風景に目を細め、失われゆく美しき明治の時代に思いを馳せている。
現在、日本はオリンピックを終え、さらなる近代化へと邁進しているが、その影で古いものが容易に捨て去られている現実もある。明治村の誕生は、文化遺産の保存の重要性を訴えるとともに、私たちがどこから来たのかを問いかける心の拠り所となるだろう。犬山の豊かな自然に抱かれたこの村は、未来を生きる子供たちにとって、最高の歴史の教科書となるに違いない。
— RekisyNews 社会面 【1965年】
アイキャッチ画像 Bariston – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=130541385による
