【マサチューセッツ州 3月6日】
本日、アメリカ・マサチューセッツ州スプリングフィールドの食料品店において、ゼネラルフーヅ社傘下のバードアイ・シーフーズ社が、世界初となる「急速冷凍食品」の試験販売を開始した。これまで「冷凍された食べ物」といえば、解凍時に細胞が壊れ味が落ちるのが常識であったが、今回発売された製品は、採れたての鮮度をそのまま閉じ込める画期的な技術によるものだ。
この奇跡を可能にしたのは、発明家クラレンス・バードアイ氏が開発した「急速冷凍法」である。彼はラブラドル半島での生活を通じ、極寒の地で急速に凍りついた魚が、解凍後も驚くほど新鮮であることを発見。従来の緩慢な冷凍ではなく、マイナス数十度の冷気で一気に凍らせることで、食品内の水分を微細な結晶に留め、組織の破壊を防ぐことに成功した。
店頭に並んだのは、ハドック(タラの一種)のフィレをはじめ、牛肉、豚肉、さらにはエンドウ豆やホウレンソウ、ラズベリーなど計27種類。これらはすべて、調理しやすいようにカットされ、清潔なカートンに密封されている。買い物に訪れた主婦たちは、カチカチに凍った箱の中に「パリのレストランのような味」が隠されているという説明に、驚きと好奇心の入り混じった表情を見せている。
しかし、この「魔法の食品」の普及にはまだ課題も多い。マイナス18度以下を維持できる専用のショーケースを備えた店舗は限られており、家庭用の冷蔵庫にも冷凍スペースはほとんど普及していないのが現状だ。ゼネラルフーヅ社は、この普及を支援するために専用の冷凍什器(れいとうじゅうき)のリースも同時に開始した。
「季節を問わず、旬の味を食卓へ」というバードアイ氏の夢は、本日、小さな町の一角から現実のものとなった。この技術が全米、そして世界へと広がれば、人類の食生活は根本から書き換えられることになるだろう。
— RekisyNews 経済面 【1930年】
