「恵比寿顔」の本格麦酒、ついに誕生 ── ヱビスビール本日発売

【東京 2月25日】

東京・目黒の三田村に産声を上げた日本麦酒醸造会社が本日、待望の「ヱビスビール」を市場に送り出した。先行する海外勢や国内他社に対し、同社が掲げたのは「本場ドイツの味」の徹底的な追求である。本日より、街の酒店や飲食店には、福徳の神・恵比寿様を象徴的に描いたラベルの瓶が並び、文明開化の余韻が残る帝都に、新たな「本物の薫り」が漂い始めている。

今回の発売の背景には、ドイツ人技師カール・カイザー氏を招聘し、原料の麦芽やホップ、果ては醸造機械に至るまでをドイツから直輸入したという、徹底した品質至上主義がある。醸造所には最新鋭の設備が導入され、わが国のビール製造技術を盤石なものへと引き上げた。銘柄に選ばれた「ヱビス」は、商売繁盛の縁起物として庶民に親しまれる神の名であり、「高品質な洋酒を日本人の暮らしに浸透させる」という同社の強い意志が込められている。

現場となった日本橋や銀座の繁華街では、馬車に積まれたビールの木箱が次々と運び込まれ、道行く人々が興味深そうに足を止めている。一本の価格は、一般的な庶民の食事数回分に相当する高価な品だが、そのコクのある味わいと黄金色の輝きは、早くも通の間で評判だ。ある酒店の主人は「これまでのビールとは香りの深さが違う。まさに、福が舞い込んでくるような景気のいい味だ」と、満足げに語った。

このヱビスビールの登場が、わが国のビール市場における品質競争を加速させ、後の「麦酒王国・日本」の基礎を盤石なものにしていくのではないかとの見方もある。ラベルの中で微笑む恵比寿様が、日本の近代化にいかなる幸運をもたらすのか、その歩みが鋭く注目される。

— RekisyNews 商報 【1890年】

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