【沖縄本島南方洋上 12月9日】
本日午前、ソ連空軍の爆撃機Tu-16とみられる機が日本の領空を侵犯し、これに対して航空自衛隊戦闘機が実弾による警告射撃を行うという、戦後日本でも極めて異例の事態が発生した。冷戦下における日ソ間の軍事的緊張が、一気に表面化した形だ。
防衛庁によれば、午前10時30分ごろ、沖縄県・宮古島のレーダーサイトが4機の国籍不明機を探知。解析の結果ソ連軍機と判明し、日本の防空識別圏を越えて沖縄方面に接近したため、那覇基地から F-4EJ戦闘機2機が緊急発進 した。その後増援を含め、計数機のF-4EJが対応にあたったという。
上空で視認した結果、編隊のうち1機は ソ連の戦略爆撃機Tu-16(通称バジャー) と確認された。自衛隊機は英語とロシア語による無線警告、翼を振る視覚信号など、定められた手順で退去を求めたが、同機は針路を変えず沖縄本島方面へ飛行を継続。
このため司令部の許可を受けた編隊長が、Tu-16の前方空域に向けて機関砲による 警告射撃を実施、弾は機体に命中することなく海上へ落下したとされる。
その後、Tu-16は針路を変更し、北西方向へ退去した。民間への被害報告はなく、沖縄本島上空での爆撃や交戦といった最悪の事態は回避された。だが、地元では「もし撃墜や反撃があればどうなっていたか分からない」と不安の声も上がっている。
防衛庁は本日の事案を重く見て、ソ連政府に対し厳重抗議を行う方針を表明。外務省関係者は「日本の領空を守るためのやむを得ない措置であり、今後も冷静かつ断固たる対応を取る」と述べた。一方で、わずかな判断の違いが大規模な武力衝突につながりかねないことから、軍事専門家の間では「極めて危うい一線をかすめた」との指摘も出ている。
今回の警告射撃は、航空自衛隊史上初の実弾使用として、日本の安全保障政策に大きな転換点を刻む出来事となった。
東西冷戦の最前線に位置する日本周辺の空は、今後も緊張の度合いを増すとみられる。
— RekisyNews 国際面 【1987年】
